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東京外国語大学シリア研究会

جمعية طلاب اليابان وسورية

シリア研究会
4th President
Yuuna Aoki

初めて他国の問題についてしっかり考えたのは、『国をつくるという仕事』(西水美恵子著)という一冊の本に出会ったのがきっかけだった。著者の西水氏は、前世界銀行副総裁としての経験から、国際開発における経済援助の問題点や、苦労を描き出し、国家のトップたる人物の理想像を示している。特に私に影響を与えたのは、「草の根レベルの対話を大切にする」、という彼女のモットーであった。私は草の根という言葉にそもそもあまり馴染みが無かったのだが、彼女の考えに触れ、国際協力においては不可欠な意識であるのだと気がついた。

 

独裁者が国民を一人ひとりの人間と考えずに、自分が支配すべき人民という集団としてしか見ていないことは明らかである。しかし実は、私たちも同じような視点で国際問題を見つめてしまうことがあるのではないだろうか。

例えば中東のテロの話や女性に対する暴力事件の話題をニュースで耳にしたとき、多くの人が「またあの地域か。」と考えてしまいがちであることは否定できないだろう。日本人はメディアの報道によって、中東に対するステレオタイプを作り上げてしまっているように思われる。

この固定観念を払拭するには、懸命に明るく日々を生き抜く中東地域の人々が考えていることや、彼らがそれぞれ思い描く理想や未来に耳を傾けることが一番だと思うのだ。それこそが草の根の声に耳を傾けることであり、一人の人間としてのその国の国民を見つめるとき、困っている近所の人を助けてあげようと思うのと同じくらい自然に、何か行動したくなるはずだ。

確かに、世界中の困っている人々の全員に手を差し伸べることは現実的に不可能だ。しかし、何か行動しようと考える人たちが世界中に増え、現状を変えようという意志が世界的な潮流になってしまえば、どこかの独裁政権も、国際的なテロ組織も何らかの変化を迫られるはずだ。

 

私はこれらの考えから、アラビア語を勉強する者として、一地球市民として、中東地域に関するバイアスのかけられていない情報と、草の根の声に触れながら国際問題の本質を見極めたく、シリア研究会に加わった。

学生が実際に行動できることは確かに限られているかもしれない。しかし、ダマスカス大学とのオンライン授業を成功させることで、シリアの未来を担う学生を何らかの形で応援することはできると思うし、シリアの子どもたちがわくわくしながら書いた手紙を日本の子どもたちと共有し、文通の手助けをすることで、彼らが少しでも未来に希望を持ちながら毎日を生きていく手助けができると思うのだ。

現行のプロジェクトを持続させていくことに加え、将来的には物資輸送が困難なシリアの状況を考慮して、オンラインを利用した新たなプロジェクトを手がけていっても良いかと考える。

シリア研究会では政治、歴史、文学など様々な面からシリアを研究しているが、私の個人的な興味では特に政治についての理解も深めていきたい。

今はまだ少人数であるが、より多くの人から共感を得てにぎやかに活動していくことも願いのひとつである。

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